全国医師ユニオンと過労死弁護団全国連絡会議は9月9日、都内で「過重労働と医師の働き方を考えるシンポジウム」を開き、医師(勤務医)にも適正な労働時間管理が必要とする提言を行った。
●労働時間管理が曖昧
過労死弁護団の松丸正代表幹事は、過重労働の要因について「勤務医が正確な労働時間を病院に申告できないためだ」と指摘。背景として医師の労働時間が適正に管理されていなかったことを挙げた。
「勤務医の労働時間には当直だけでなく、これまでボランティアと位置付けられてきたオンコール(急患に備えるため自宅などで待機すること)も含めるべき」と述べた。
●36協定が形骸化
最近、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)で、勤務医や看護職員の時間外労働を「月300時間」までとする36協定が結ばれていたことが発覚。シンポでは、このケースに触れながら医療現場で36協定が形骸化している実態についても指摘された。
新潟市民病院の研修医が過労自死した事件の代理人を務める斎藤裕弁護士は、36協定はあっても医療労働者が守られていないと指摘。同病院では以前から労働基準監督署から是正勧告がされていたにもかかわらず、病院は事件発生後に36協定を緩和。病院内の組合も抵抗しなかったという。斎藤弁護士は「(過重労働に)耐えられない医師は死んでも仕方がないという病院での長時間労働文化がある。この意識を変えていく必要がある」と強調した。
●長時間労働にメスを
勤務医らでつくる全国医師ユニオンの植山直人代表は、病院が労働時間把握に消極的な理由について「医師を労働者扱いしないのは残業代を払いたくないからではないか」と批判。「労基署の立ち入りなどが徹底されなければ、病院はおのずと易きに流れていく」と述べた。
過労死弁護団の川人博幹事長は「医師は公共性の高い職業だからと、労働時間が適正に管理されてこなかった。同じく公共性の高い教員について文科省は過重労働の改善に動き出している。医療界でも議論を深め、働き方改革でも徹底して医師の長時間労働規制を取り上げていくべきだ」と話した。
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