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    老後生活に備える(7)/年金繰り上げ受給の損得

     年金の受給年齢に達する前にもらい始める繰り上げ受給制度。全体の約35%の人がこの制度を利用しているが、最近は選択する人が減っている。デメリットが多いからだ。

     繰り上げ支給の制度を使うと、60歳以降ならいつでも年金を受け取れるようになる。早期に受け取れるのはありがたいが、早くもらう期間に応じて、受給額が減額される。1カ月繰り上げるごとに0・5%減るので、1年間だと0・5×12=6%も減らされる。

      例えば、65歳から支給が始まる基礎年金を60歳で繰り上げ受給した場合には、30%の減額。これが生涯続く。受給総額を比べると、76歳までなら繰り上げ受給の方が上回るが、77歳からはずっと「損」が続く。平均寿命を考えると、多くの場合は繰り上げ受給しないのが正解だ。

     厚生年金の報酬比例部分の繰り上げ受給は、減額率の計算が基礎年金と異なる。1961年4月1日(女性は1966年4月1日)までに生まれた人は、65歳以前に受給が始まるからだ。今年から再来年にかけて60歳を迎える1957年4月2日~1959年4月1日生まれの男性の場合、報酬比例部分の受給開始は63歳。60歳で繰り上げ受給した場合の減額率は0・5%×36カ月=18%となる。

     繰り上げ受給にはこのほか、障害基礎年金や寡婦年金がもらえなくなるといったデメリットもある。