「老後破綻を防ぐ貯蓄は3千万円」「余裕ある生活には1億円!」――最近こうした記事がメディアをにぎわせている。思わず、「自分は下流老人に一直線なのか?」と絶望的な気分になるが、これって根拠のある数字なの?
例えば、総務省の家計調査(2016年)によると、高齢夫婦の無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の2人世帯)の実収入は21万2835円で、税金などを差し引いた可処分所得は18万2980円。一方、消費支出は23万7691円なので、毎月約5万4千円の赤字となっている。
平均寿命を想定して25年間そうした生活を続けたとしても、累積赤字は1640万円余り。3千万円の半分程度。日銀によると60代の金融試算保有高は平均で1509万円だから、ほぼまかなえる計算だ。
もちろん、これは統計調査の平均値を使った試算。退職時に1500万円の貯蓄がなくても心配する必要はない。毎月5万円以上の赤字生活を25年続けるという前提が、そもそも非現実的だからだ。
老後にいくらかかるのかは、病気や介護の有無、子どもや孫との関わり方、持ち家か賃貸か、旅行や娯楽にどれだけお金を使うのかなどによって大きく変わる。老後の生活設計には、数字に惑わされない冷静さが必要だ。
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