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    危ない家庭教育支援法案/臨時国会に提出予定/戦前の過ちを繰り返す恐れ

     秋の臨時国会に提出予定といわれる家庭教育支援法案。子どもの教育に対する親の「第一義的責任」をうたうもので、安倍首相が初代会長を務めた親学推進議員連盟が2012年以来、立法化を目指し活動してきた。同法案については「家庭教育への国の介入」「多様な家族のあり方を否定する」といった批判の声も多い。何が問題なのだろうか。

     

    ●国任せは危険

     

     親学推進議員連盟は法案の目的を、少子化や核家族化に伴って失われた「家庭生活の智恵」を取り戻すこととしている。そのために地域で家庭教育に関する「学習の機会」を提供したり、「相談体制」を整備したりする。「家庭教育支援に関する人材」も養成するという【表1】。

     二宮周平立命館大学教授は、7月に都内で行われたシンポジウムで「基本方針や施策は文科大臣が決めるとされており、どのような家庭教育支援を行うかは国の裁量次第」と警鐘を鳴らした。

     「子育てに伴う喜びを実感できるように配慮する」などという文言も問題視する。「苦しい状況で子育てする人もおり、感情には個人差がある。(国が個人の内面に介入するのは)憲法で保障された『内心の自由』を侵す。親子がゆっくり過ごす時間を持てない要因の一つは、親の長時間労働。国はまず就労環境の改善を行うべきだ」と批判した。

     2006年に施行された「改正」教育基本法には既に「家庭教育支援」が条文として盛り込まれている。それから約10年。8県5都市では既に家庭教育支援条例が制定された。保守勢力による請願が奏功したといわれる。こうした流れを追い風に、法案が成立してしまう恐れは強く、予断を許さない状況といえる。

     

    ●戦前にも同じ仕組み

     

     戦前にも「家庭教育支援」の仕組みが存在した。1937年に発表された「戦時家庭教育指導要項」がそれだ。当時の第1次近衛文麿内閣が子どもを「大東亜戦争遂行」に役立つよう教育するためにつくったもの。その要項をもとに当時の文部省は婦人団体などと共に、全国約千カ所で「家庭教育講座」を開催したという。

     要項には「個よりも公を尊重する」「家庭を国家の基礎とする」などの考え方が盛り込まれており、今回の家庭教育支援法案との類似性が指摘されている。

     自由法曹団はこのほど、かつての要項の内容を広く知ってもらおうと、原文(文語体)を分かりやすく現代文に直す超訳を行い、発表した。

     以下、その抜粋と、家庭教育支援法案の類似部分を比較表にして紹介する。