「給料は会社が決めるものでしょ。(春闘で)労組が口を出すって変じゃない?」
「労組って悪い人たちなんですよね?」
「なんで労組が平和問題のビラ配りなんかしてるの?」
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若い労働者からこんな質問をされたら、どう答えますか。「全く今どきの若い連中は…」などという言葉が出そうになるあなた、一呼吸置きましょう。昔の常識は今の常識とは限らないのですから。
冒頭の質問は、著者の竹信さん(和光大学教授)が授業などで学生から聞いた、素朴な疑問です。それに一つ一つ丁寧に答えているのが本書の特徴。仕事選び、ワークルール、労働組合、過労死、失業・解雇などについて分かりやすく解説しています。
労働組合の先輩・役員は新人にどう向き合えばいいのか。それを学べる手引書・参考書でもあります。
ただ、列挙された30の疑問を眺めていると、学生たちの経営者目線が気になります。「長時間労働はいけないといいますが、会社は慈善事業じゃないんです。長時間働かないと日本の会社は持たないのでは?」「最低賃金を上げたら会社はつぶれるでしょ」など。でも、それは彼ら彼女らの責任でしょうか。大人社会、特に労働運動が社会的影響力を弱めてきた結果と見ることもできます。
あとがきでは、授業を通じて若者たちが自信を付けていく姿も紹介しており、そこに希望が感じられます。案外、未来は暗くないのかもしれません。
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