UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU、約7万2千人)はこのほど、介護事業40法人との間で、利用者への虐待防止に関する集団協定を締結した。管理者への研修や相談窓口の設置を行い、予兆や疑いの段階で虐待の芽を摘もうという内容だ。NCCUと、支部・分会のある介護事業法人とでつくる「介護業界の労働環境向上を進める労使の会」が8月7日、発表した。
集団協定は(1)管理者への研修を含む教育システムの構築(2)心理的負担を軽減、解消するためのストレスマネジメントの実践(3)虐待を防ぐ経営方針の明確化(4)相談窓口の設置(5)相談・苦情の申し立てと通報者への不利益取り扱いの禁止――などを定めている。
相談窓口は、法人内だけでなくNCCUにも設け、通報や相談があった場合に当該の法人に連絡する。通報については「事実確認ができない場合においても、予兆や疑いがある段階での相談について申し出ることができる」と早期の対処を重視している。
ケア21やセントケア、SOMPOケアメッセージなど介護大手を含む40法人が締結した(表)。対象人員は約3万7千人に上る。
労使の会の代表幹事で、依田平・ケア21社長は「利用者の虐待を絶対に許してはならないという強い決意をスタッフに伝えていくことが経営者の使命だ」、副代表幹事の栁倫明・麻生介護サービス社長は「組合と企業が一緒になって、世の中が(虐待防止に)注目しているという流れをつくることが大事」と意義を語った。
●大本の改善が必要
NCCUが昨年、組合員に行ったアンケート調査で虐待の原因について聞いたところ、最も多かったのが「業務負担が多い」の54%で、次いで「仕事上でのストレス」49%、「人材不足」43%と、人員不足や業務量の多さを指摘する声が多い。
依田代表幹事は「入所系施設では利用者3人に対して職員を1人配置すればいいという国の基準(3対1)だが、これでは良い介護はできない。(法人の持ち出しで)何人かの職員を補填(ほてん)しているのが現状だ。配置基準を2対1にすれば虐待は大幅に減るだろうし、それに伴う介護報酬を引き上げれば虐待の問題は大方解決できるのではないか」と語る。
労使の会は、集団協定の内容に沿って法人内での虐待防止を進めるとともに、2018年の介護報酬改定を見すえ、人手不足の大本にある介護報酬の引き上げを求める署名活動を展開する予定だ。
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