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    風化させず、脱原発の実現を/被爆72周年原水禁福島大会/住民の強制帰還を批判

     原水爆禁止日本国民会議などでつくる実行委員会主催の被爆72周年原水爆禁止世界大会・福島大会が7月29日、福島市内で開かれ、約720人が参加。「福島の現実を直視し、原発のない社会の実現を展望した運動を進めなければならない」とのアピールを採択した。

     福島大会は福島第一原発事故が起きた2011年に始まり、今年で7回目。「現状と課題を共有し、風化させない」(角田政志・福島県平和フォーラム代表)との思いから続けられている。

     基調提案をした藤本泰成大会事務局長(原水禁国民会議事務局長)は、避難解除を進める政府方針について「(解除地の)被ばく限度量が平常の20倍に当たる年間20ミリシーベルトに緩和されるなど、健康で文化的な最低限度の生活を保障した憲法25条に違反する」と批判。福島で反原発に取り組む活動家からは、原子力災害対策特別措置法に基く「原子力緊急事態宣言」が現在も継続されていて、放射能に汚染された汚染水や土壌なども増え続けている実態が報告された。

     

    ●緩すぎる避難解除基準

     

     避難解除による住民帰還と生活再建をテーマにした分科会で、浪江町の岡洋子さんは「心の中で故郷を忘れたことはないが、帰れない。帰っても普通の暮らしができない」と思いを吐露。「避難していることを周りに言えず、目立たないよう生活している人が大勢いる」と苦境を訴えた。

     助言者として発言した脱原発弁護団全国連絡会共同代表の海渡雄一弁護士は、「チェルノブイリの避難解除基準は年間5ミリシーベルト以下。国際放射線防護委員会(ICRP)も住民帰還の基準を1~20ミリシーベルトの下方部分とするよう勧告している」と指摘。「20ミリシーベルトは、世界標準からかけ離れている。日本政府は原発事故を過去のものにするため、強制的に住民を戻そうとしている」と批判した。