高度プロフェッショナル制度(高プロ制、残業代ゼロ制度)と企画業務型裁量労働制をめぐる連合内の一連の混乱が決着した。7月27日、札幌市で開かれた臨時中央執行委員会で、政労使合意の見送りが確認され、法案を事実上容認する方針は撤回された。秋の臨時国会で、労働界が一致して取り組めるよう関係者の努力が期待される。
政府は、高プロ制を導入する労働基準法改正案と、罰則付き残業上限規制を導入する法案を、一括法案にまとめる方向。連合本部は3月末から政府と水面下の交渉を行い、7月8日の三役会で法案の修正を政府に要請することを初めて報告した。組織確認を経ないまま政労使合意を行おうとしたことに、多数の構成組織、地方連合会から批判や疑問の声が上がった。
関係者によると、27日の臨時中執では、逢見直人事務局長がこの間の組織運営と、民進党との連携の不備を陳謝し、神津里季生会長が意思決定方法の改善を約束したという。そこで、政労使合意の見送りと、民進党と連携した国会対応を行うことが確認された。
2年間たなざらしの高プロ制導入法案を、政府が連合の「支持」を取り付ける形で、この秋に成立させる構想には一応のブレーキがかかったことになる。
●実行計画の見直しを
問題は今後の対応だ。
一括法案には、残業上限規制をはじめ、残業割増率(月60時間超に50%)の中小企業に対する適用猶予の解消、一定日数の年休取得義務付けなど、労動側が求めてきた改正が含まれる。一方、高プロ制は残業、深夜、休日の規制を全て外す制度で、長時間労働対策とは正反対の法律。企画型裁量制の拡大も、営業職の長時間労働が懸念される。
まずは抱き合わせにすることの異常さを広く伝えることが鍵となる。
中執では労政審への対応に注文がついたという。今後予定される法案要綱審議に強い姿勢で臨むことと併せて、「労働側委員を後押しする世論形成が必要だ」と関係者は語る。一連の騒動で人々の関心が呼び起こされた今、チャンスといえるかもしれない。
そのうえで、焦点となるのが一括法案への対応だ。神津会長は「全体がどういう形になるのか見極めなければならない」と賛否について明言を避けている。
連合本部が「労基法70年の歴史で画期的な改正」と評価する残業上限規制は、過労死認定基準の水準であることを、日本労働弁護団や過労死家族の会、他の労働団体が厳しく批判。組織内の主要民間産別にさえ不満がくすぶる。高プロ制を認めてまで成立させるべきものだろうか。
勤労者全体にかかわる問題。組織内はもちろん、幅広く関係団体の声を聞くことこそ、信頼回復と悪法阻止への一歩ではないか。
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