連合は、労働時間の規制を外す高度プロフェッショナル制度(高プロ制、残業代ゼロ制度)について、いったん容認に傾いた。制度そのものの問題点と、連合の一連の動きをどう見るのか。連合「クラシノソコアゲ応援団」の特別団員でもある森永卓郎・獨協大学教授に話を聞いた。
●米国の対日要求が発端
(労働時間規制を外す)ホワイトカラー・エグゼンプション制(WE、高プロ制)を、一時的であっても連合が容認したのは、消費税増税を容認した時以来の大失策だ。
政府が言うように、適用対象を年収1075万円以上に限定するなら、ほとんどのサラリーマンには関係がなく、被害は大きくないかもしれない。問題は、その範囲にとどまらないということだ。
労働者派遣法制定の際には、適用は13の専門業務に限定され、「製造業務には絶対適用させない」と言っていた。それが結局、どんどん広げられていった。
WEを導入しようという動きは、米国の対日要求から始まった。米国では多くの労働者にWEが適用されており、「日本ではなぜ残業代を払わなければならないのか」という米企業の要求があるからだ。適用対象が広げられれば、過労死促進と残業代ゼロが頻発するのは目に見えている。
連合は、休日確保などの健康確保措置を取り引き条件にした。仮に妥協するというなら、年収要件の1075万円を法律本体に書き込み、絶対に変更しないこととすれば、まだよかった。健康確保措置程度では歯止めにならないと思う。
●法案撤回を求める
どうして連合が妥協しようとしたのか、全く謎だ。地方組織や傘下組織との議論もなかったと聞く。
第1次安倍内閣の時にはWE法案を提出することさえできなかった。今回も提出から2年間、審議をさせずにきた。私は廃案になるだろうと思っていた。
今のように安倍内閣に逆風が吹いている時に、なぜこちらから歩み寄るのか理解できない。どう考えてもおかしい。寝耳に水だ。
ただ、(一連の騒動で)安倍内閣の働き方改革は、働かせ改革だということが如実に示されたのではないか。ここは、法案をいったん撤回させて、一般サラリーマンに被害が広がらないよう歯止めを掛ける必要がある。もう一度政府と交渉をやり直すべきだ。
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