高度プロフェッショナル制度(高プロ制、残業代ゼロ制度)導入と企画型裁量労働制の対象者拡大の修正を政労使で合意することをめぐり、連合は7月21日、議決機関である中央執行委員会で初めて討議にかけた。構成組織をはじめ、特に地方連合会から強い批判が相次ぎ、結論は先送りになった。当初予定されていた日程は大幅な修正を余儀なくされた。
●見極めついていない
一連の騒動は、残業の罰則付き上限規制を定める労働基準法改正案と、連合が強く反対してきた、高プロ制導入を含む労基法改正案とを、政府が一つの法案にまとめて臨時国会に提出しようとしていることに端を発する。
当初予定では、12日に政府に健康確保措置などに関する修正を要請した後、19日には政労使合意の予定だったが、唐突な提案手法や組織合意を踏まえない運営に批判が相次ぎ、仕切り直しに。改めて21日の中執で確認し、速やかに政労使で合意するスケジュールを描いていた。
しかし、21日の中執では構成組織から異論が続出、特に地方連合会から強い批判が相次いで出されたという。結局、了承を求めないまま閉会し、結論は先送りされる形となった。
連合の副会長らで構成し中執への提案内容を検討する三役会(19日)でも、多くの委員が苦言を呈した。一度立ち止まって考えてみるべきではないかとの意見や、一括法案化の見直しを求められないのかという疑問も出されている。ここでも理解が進んでいるとはいえない状況だった。
神津里季生会長は中執後の会見で、「政府が一本化を表明している下で、働く者が危険にさらされることに手をこまねいているわけにはいかない」と連合本部の立場を説明。要請に対する政府の回答も「主旨に沿った形で来ている」としつつ、最終的な文言について受け入れ可能な内容となるどうか「見極めがついていない」と現状を報告した。
政労使合意を行うかどうかについては、8月25日に予定されている中執を待たず、臨時の会議を招集することになるという。
●総論賛成?
報道陣の関心が高く、会見会場は急きょ広い会議室に変更され、終了時刻は予定より15分延長した。
一括法案への対応について、逢見直人事務局長は「法案の全体像を見て判断すべき」という立場を説明した。その理由として、罰則付きの残業上限規制、月60時間を超える残業割増規制の中小企業への適用猶予の解消、一定日数の年休取得義務付け――などの改善項目が一括法案に含まれていることを挙げた。民進党にはこの内容での協力を要請している。
●3週間以上の空白期間
政府要請に至る経過にも質問が及んだ。逢見氏は「働き方改革実行計画」が3月末にまとめられて以降、「(政府関係者と)15年法案(継続審議中の労基法改正案)と働き方改革がどう扱われるのか、意見交換してきた」と述べたが、詳細についての説明は避けた。一括法案とされることが分かった時期は、「曖昧な記憶」と前置きしつつ「通常国会が終わる前だった」と答えている。
国会の会期末は6月18日。政府に要請を行うことが組織内で初めて知らされたのが7月8日の三役会。3週間以上もの間、なぜ三役会にさえ検討を諮らなかったのか。また、政府への修正要請を行うと決めたのはいつなのか、そもそも政府との折衝は誰の呼びかけで始まったのか、折衝の相手はどのような立場の人物なのか――疑問は尽きない。
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