「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    沖縄レポート/それでも県民は諦めない/新基地断念を迫る勝負の夏

     7月22日午後、炎天下の名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲート前に2千人(主催者発表)が集まり、1・2キロにわたって手をつなぐ「人間の鎖」が取り組まれた。2千人はこれまでと比べて多いとはいえない。しかし、那覇から高速道路を使っても2時間かかる場所に、夏休み最初の土曜日、そして猛暑の中、各地から貸し切りバスも出しての集会だ。「心の参加者は多い」と参加できなかった人々の思いを語る声も報じられた。

     24日、沖縄県は工事阻止のために新たな訴訟を提起する。知事の許可を得ないまま岩礁破砕をするのは県漁業調整規則に反すると県は主張する。国は「名護漁協の漁業権放棄により漁業権は消滅していて知事の許可は不要」という立場だ。そもそも岩礁破砕許可は埋め立て承認が前提である。昨年末の最高裁判決での敗訴後、翁長雄志知事は埋め立て承認「取り消し」を取り消して、承認は有効となっている。そのため県勝訴はあり得ないと指摘する全国紙もある。新たな法廷闘争も予断を許さない。

     

    ●抵抗は続く

     

     選挙や大規模集会で民意を何度示しても無視され、司法も信頼できない。憲法の上に日米安保があるこの国は、米国による占領が偽装された形で続いている。その中で二重の植民地支配下にある沖縄は、どのように展望を切り開けばいいのだろうか。「諦めない」という意志、民意を示し、現場で抵抗することを続けていくことで政治情勢を変化させられると人々は信じている。

     8月12日には那覇市で大規模な県民大会を開催する。沖縄への土砂搬出に反対する全国各地の運動がネットワークを作って行動を起こしている。NPO法人新外交イニシアティブ(ND)は「辺野古移設」以外の選択肢について提案するシンポを沖縄、東京、ワシントンで開催した。大阪から始まった沖縄の基地引き取り運動も福岡、新潟、東京などへと広がり、全国シンポも開催された。また、米国、韓国などの市民運動との連携も厚みを増している。国連でも発言を重ねてきた。

     辺野古現地では連日ゲート前に数十人が集まり、海上でもカヌーを繰り出し、体を張って抗議活動を展開している。工事車両の車列が近づくと機動隊が座り込む市民を排除することが繰り返され、埋め立てに向けて2本の護岸工事が進む。1本は約100メートルだが、台風に耐えられないだろうといわれている。1日に何十台かのダンプが入るぐらいでは何年かかるか分からない状況であり、まだ、後戻りは可能だ。

     安倍政権が揺らいでいる今、新基地を断念させるため、沖縄の勝負の夏はさらに熱い。(ジャーナリスト 米倉外昭)