野村総合研究所は2015年、「オックスフォード大学の研究を日本にあてはめると49%の雇用がAIに置き換え可能」との試算を発表している。この数値については「机上の空論」といった批判も多いが、実は、職場へのAI進出は既に始まっている。
以前から多くの工業用ロボットが導入されている製造現場。自動化が困難だった目視作業を伴う検品などの業務に、認識能力の高いAIを活用しているのが特徴だ。
東芝の半導体製造工場(三重県四日市市)では、不良品検品時の分類作業にディープラーニングを使ったAIを投入。1日に30万枚の画像をチェックさせることで、分類から原因分析までの時間を3分の1に短縮できたという。
製造業向けに異常検知のAI開発を行っているクロスコンパス・インテリジェンスの鈴木克信氏は「AIによる検知は、人間が見逃していた異常を発見することも可能。人材不足の中、ベテラン技術者の流出が深刻な課題だが、その穴埋めができる」と胸を張る。
事務作業にもAIは使われ出した。三菱東京UFJ銀行は、AIを活用したオフィスロボットを約20種類の事務処理に活用。年間8000時間の労働時間を短縮したと発表している。
サービス業も例外ではない。回転寿司最大手のスシローでは、ある時点で客が取ったネタの数・種類から次にどんなネタがどのくらい取られるのかをAIを使って予測。廃棄寿司を75%削減する効果を上げている。
人工知能学会で報告・紹介されたこれらの事例は、AI導入の成功例だろう。しかしAIと引き換えに雇用が失われるケースも徐々に出始めている。(続く…次回の連載は6月20日頃からの予定)
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