「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    AIは労働者を幸せにするのか(3)/機械が「眼」を獲得する

     全ての労働を人工知能(AI)がこなせるわけではない。しかし、かなりのことは任せられるようになるという見方も存在する。東京大学大学院工学系研究科の松尾豊准教授は「これまでは難しかった建設や農業、調理などの職場にもロボットが入ってくるようになる」と予測する。

     その鍵を握るのが、松尾氏が日本での研究をけん引するディープラーニングだ。「生物に例えるなら、ディープラーニングは眼の獲得に匹敵する出来事。眼は生物の多様な進化を促したが、それと同様のことがAIとロボットにも発生するからだ」という。

     ディープラーニングは大量のデータ(テキストや画像など)の学習により、すぐれた認識能力を獲得できる。従来のAIでは難しかった猫と犬の区別、リンゴとなしの区別も可能だ。この能力をイメージセンサーと組み合わせれば、機械は眼を持つことになる、という理屈だ。

     例えばトマトの収穫。一つ一つのトマトを人間が目視しながら作業を進める必要があり、これまで自動化は難しかったが、トマト認識を学習済みのAIロボットを入れれば、人手は不要だ。こうしたことがあらゆる産業で発生するという。

     「少子高齢化で進む労働力不足への解決策になり得る。ものづくりとの相性がよく、日本の強みを生かせる。後継者不足が問題となっている熟練工の技術継承も可能だ」。松尾氏は明るい未来像を描いている。(続く)