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    AIは労働者を幸せにするのか(9)/労働規制緩和の口実に

     少子高齢化の下、日本の労働力人口は急減している。政府推計では、2030年まで毎年17万人ずつ減っていく。この労働力不足をカバーしていこうというのも、AI推進の理由になっている。

     人工知能技術戦略会議の安西祐一郎議長は「日本の労働生産性はG7の最低レベル。また若年労働者はこの20年で半減している。ここにAIをどう役立てていくのかが問われている」と強調する。

     その一方で、経済産業省は昨年4月に出した「新産業構造ビジョン」(中間整理)の中で、「AIやロボットにより雇用が置き換えられる結果、2030年までに最大で735万人の雇用が失われる」と予測する。同時期の労働力人口の減少は250万人前後だから、これでは労働力不足のカバーどころか、大失業時代を招きかねない。

     ところが、この経済産業省の報告には、もう一つの数字がある。「変革シナリオに沿った対策を取るなら、雇用喪失は161万人に抑えられる」という予測だ。これならば労働力人口の減少の範囲内に収まる。しかし、変革シナリオとして提起されている内容には問題が多い。「日本型雇用システムの変革」「時間・場所・契約にとらわれない『柔軟』な働き方の加速」といった項目が列挙されているのだ。

     昨年1月に同省が出した「第4次産業革命への対応の方向性」はより具体的に「労働市場の流動性向上」や「労働法制も成果ベースでの評価を前提とした変革」などを提起している。

     だが、AIなどの活用が労働規制緩和とどう絡むのかについて、どちらの報告書にもまともな説明はない。雇用維持を人質に、労働規制緩和を加速させようとしているという批判は免れないだろう。