今年3月、政府の人工知能技術戦略会議がAIの研究開発と産業化のロードマップを発表した。ものづくりや物流、サービスなど生産に関わる分野とともに、健康、医療・介護の分野について、〃AIがここまでできるようになる〃といった目標を描いている。
同会議は、総務省、文部科学省、経済産業省の3省がAI技術開発で連携を図っていくため、昨年4月に設けられた組織。議長を務める独立行政法人・日本学術振興会の安西祐一郎理事長は6月末、都内で開かれたセミナーでロードマップについてこう説明した。
「(今回は)高齢化社会をAIでどのように支えていくのかという視点で、健康、医療・介護の分野を前面に出したが、AIはありとあらゆる分野で使える技術だ。一般企業も、IT産業かどうかに関係なく、各事業にAIをどう役立てていくのかを考える時代になっている」
2020~30年を目途にしたロードマップには、自動車の完全自動運転や自律型の輸送・配送サービス、AIによる疾病の早期発見、熟練医師の技を再現した手術ロボット、農業の無人化、家族の一員として寄り添う汎用ロボットといったメニューが並ぶ。一見するとバラ色の近未来生活だ。
しかし、手放しで喜べない。ロードマップには次のような一文があるからだ。「AIを使って世界一の医療技術先進国・介護技術先進国を構築する」「予防医療の高度化により…80歳でも就業を希望する高齢者が元気に働いている社会を実現する。これにより…社会保障費の軽減を図る」
生涯現役と言えば良さそうに聞こえるが、年金や医療を削られ、生きるためには死ぬまで働かなければならない高齢者の姿が見えてくる。
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