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    AIは労働者を幸せにするのか(7)/削減された有期社員

     昨年12月、富国生命保険相互会社(フコク生命)は、給付金などの支払い査定業務にIBM社製のAIを導入し、業務処理負担を30%削減すると発表した。この一見地味なニュースに、国内はもちろん、海外メディアも飛びついた。削減される対象が査定部門で働く労働者だったからだ。英国のBBC放送(WEB版)は「人間が機械によって仕事から追い払われる未来をSFは長い間想像してきたが、それが現実となった」と報じた。

     フコク生命が同部門にAIを導入したのは今年1月。保険給付の請求時に契約者から送られてくる診断書を自動で読み取り、病気、災害、手術などの記載をコード化していくのがAIの仕事だ。同社の保険査定は1日500~600件。1件の査定にこれまで12人が関わっていたが、AI導入後は6人での処理が可能になったという。その結果、約130人いた査定担当者の25%にあたる34人の有期社員が削減された。

     「今年3月末までに契約期間満了となる有期社員の代わりをどうするのかという議論の中で、AI導入が出てきた。雇用削減ありきではない」と同社広報部は説明する。しかし、AI導入で見込まれる経費削減は決して小さくない。契約満了となった34人の人件費は年間約1億4千万円。これに対し、AIは初期投資に約2億円が必要だが年間経費は1500万円程度だ。 同社では、契約者からの苦情分析・対応にもAIを導入済み。今後は支払い査定の検証作業にもAI活用を広げる予定だ。もちろん他の保険会社でも同様の動きが進む。ちなみにAIと雇用に関する英オックスフォード大学の調査では、保険事務は最も代替率が高い仕事の一つ。AIによる自動化率は99%と推計されている。(つづく)