全ての労働を人工知能(AI)がこなせるわけではない。しかし、かなりのことは任せられるようになるという見方も存在する。東京大学大学院工学系研究科の松尾豊准教授は「これまでは難しかった建設や農業、調理などの職場にもロボットが入ってくるようになる」と予測する。
その鍵を握るのが、松尾氏が日本での研究をけん引するディープラーニングだ。「生物に例えるなら、ディープラーニングは眼の獲得に匹敵する出来事。眼は生物の多様な進化を促したが、それと同様のことがAIとロボットにも発生するからだ」という。
ディープラーニングは大量のデータ(テキストや画像など)の学習により、すぐれた認識能力を獲得できる。従来のAIでは難しかった猫と犬の区別、リンゴとなしの区別も可能だ。この能力をイメージセンサーと組み合わせれば、機械は眼を持つことになる、という理屈だ。
例えばトマトの収穫。一つ一つのトマトを人間が目視しながら作業を進める必要があり、これまで自動化は難しかったが、トマト認識を学習済みのAIロボットを入れれば、人手は不要だ。こうしたことがあらゆる産業で発生するという。
「少子高齢化で進む労働力不足への解決策になり得る。ものづくりとの相性がよく、日本の強みを生かせる。後継者不足が問題となっている熟練工の技術継承も可能だ」。松尾氏は明るい未来像を描いている。(続く)
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