今年1月、日本経済新聞社のホームページに新しいサービスが加わった。全上場企業の決算の要点を記事としてまとめた「決算サマリー」だ。書いているのは記者ではない。人工知能(AI)が、発表された資料から決算のポイントなどを抽出し、作成している。
同社の自動記事生成・翻訳プロジェクトリーダーの藤原祥司さんは「文章は記者の方が優れているが、正確性とスピードはAI。企業が決算を開示してからAIがサマリーを作成し、公開するまでは1~2分。人為的ミスを起こしやすい数字については、間違いようがない」と指摘する。
日経は〃AI記者〃をどう育てたのか。実は、教師は同社の過去記事だった。大量の記事をデータベースとして読み込むことで、決算からどのように記事が書かれるかをAIに学習させたのだ。その信頼性は高く、人間による校正・校閲は一切行われていない。
「資料からの記事作成という定型業務をAIに移行できたことで、より深い取材に記者を回せるようになった。記者からの評判もいい」と藤原さんは話す。
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かつてのインターネットやスマホ・携帯電話がそうであったように、いまAIが職場や家庭に爆発的に広がりつつある。働き方、雇用への影響も避けられないといわれる。第31回人工知能学会(5月23~26日・名古屋)の議論から「今何が起きているのか」、そして「これから何が起きるのか」を探った。(続く)
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