「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    「自衛隊追記は9条破棄だ」/高見勝利・上智大名誉教授

     「現憲法の視点からみれば、憲法廃止、9条の破棄だ」――上智大学名誉教授の高見勝利氏(憲法)は7月13日、都内で開かれた学習会で安倍首相が提案する9条加憲案を批判。「(憲法の基本原理の一つ)平和主義を軍国主義に変換するものにほかならない」と危機感を表明した。

     5月3日に発表された安倍首相の改憲プラン。9条に自衛隊の存在を追記する「改正」を2020年までに実施するのが柱だ。都議選大敗の原因の一つが、この性急な改憲方針だと指摘されているが、その後も安倍首相はプランを変えようとしていない。そんな中、社会文化法律センターや自由法曹団などでつくる「改憲問題対策法律家6団体連絡会」が高見氏を招き、学習会を開催した。

     高見氏は、国会議員にのみ与えられた憲法改正の発議権を「憲法上、最強の権力」と規定した上で、その行使は各議員の良心と立憲主義原理によって立たなければならないと指摘。憲法に手を付けることが自己目的化している安倍首相の姿勢について「権力を欲しいままに使おうとするもの。(国民は)たまったものではない」と批判した。

     また憲法改正の基本ルールとして(1)権力の拡大を目的としない(2)憲法改正しか手段がない(3)憲法の基本原理が損なわれない――といった点を挙げ、安倍改憲案への疑問を提示した。

     具体的には、9条1項、2項を維持したまま、自衛隊を憲法上に位置づける安倍提案について「『後法は前法に優る』という法律の原則によって、戦力不保持の2項は(事実上)粉砕される」と指摘。「現憲法の基本原理である平和主義の毀損(きそん)につながり、憲法の同一性を喪失させる。改正手続きを用いた新たな憲法制定を企図するものだ」と批判した。