国会で継続審議中の高度プロフェッショナル制(高プロ制、残業代ゼロ制度)導入と、企画型裁量労働制の拡大を含む労働基準法改正案について、連合が7月13日、法制化を前提に修正を政府に要請した。健康確保措置の強化、対象業務の明確化を求めている。導入には反対だが、与党1強の国会で「(原案のまま成立する)最悪の事態は避けたい」(神津里季生会長)と苦肉の策を強調する。19日に政労使合意となる運び。ただ、意思決定方法をめぐり組織内には不満が鬱積(うっせき)している。
残業上限規制を定める労基法改正案と合わせた一括法案とされることが濃厚。上限規制や中小企業に対する割増率の適用猶予解消を望む連合にとって、継続審議中の法案の扱いは頭の痛い問題だった。
要請書は、企画型裁量制の対象が、営業職に際限なく適用されることがないよう対象者の明確化を要望。高プロ制については、法案では選択肢の一つとされている「年間104日以上かつ4週間を通じ4日以上の休日確保」の義務化などを求めている。
神津会長は13日、都内で開かれたサービス連合の大会で「高プロ制の導入と企画型裁量制の拡大は必要ないと一貫して言ってきた。だが、1強政治の構図は変わっていない。間近に選挙もないなかで、最悪の事態を避けるため、3月以降、事務レベルでいろいろな形で問いかけや働きかけを行い、何とか形になりそうになった」と要請に至る経過を報告した。
民進党とはコミュニケーションに齟齬(そご)があったとした上で「導入がいいとは思っていない。引き続き追及していただきたい」とも語った。
政労使合意後、労働政策審議会での法案要綱審議に移行。秋の臨時国会での成立が図られることになる。
〈解説〉組合民主主義はどこへ
急転直下の展開だった。7月8日の三役会で突然提案された。議決機関である中央執行委員会を経ないまま、19日の政労使合意へ一足飛びに進めようとする逢見直人事務局長の説明に、少なくない委員から異論が出された。
週明けには、21日に予定されている中執を待たず、急きょ「中央執行委員会懇談会」が開催された。議決機関ではなく、意見を聴取するだけの会合だったという。
「連合は条件闘争に入るのか」といううわさは既にあった。5月17日に開かれた地方連合会事務局長会議で、逢見事務局長が修正が不可欠という旨の発言をし、複数の地方連合会事務局長が疑念を抱いていた。
その後7月8日まで三役会、中執、雇用法制委員会では一切議論されていない。地方連合会事務局長らは「5月の会議の後一、二度は議論されるかと思ったが、全くなく、今回のいきなりの提案・決定に驚いている。これで理解されるのか」「今の国会状況で実を取りに行くという考え方は理解する。だが、秋以降反対運動を強めようとしていた矢先。内部の合意形成が全くできていない。現場と呼吸が合わない」と苦言を呈す。
ある産別の幹部は「勤労者全体に関わる問題なのに中執の確認を経ないなど、しかるべき組織決定の手続きが踏まえられず、不透明な決着となった。こんなことでは解雇の金銭解決制の導入も許してしまうのではないか」と懸念する。また、逢見氏が2年前、事務局長就任以前に首相官邸を単身訪問したことと一連の行動を結びつけて考える人も少なくない。
組合民主主義より、水面下の対政府交渉が優先されたことへの不安と不信は、組織内外に広がっている。
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