「給与明細を見たら、ため息が出ました」――ハローワークの非常勤職員がこう語る。今年3月末まで就職支援ナビゲーターとして働き、4月以降は職業相談員になった。その4月分の給与が5月に振り込まれた時の率直な感想だ。
以前の月額26万円が15万円に減っていた。月10万円を超す減額だ。「私の場合は夫が働いているし、子どももいないからまだまし。シングルマザーの同僚は『これじゃ、とても生活できないから』と辞めていきました」という。
一体何が起きているのだろうか。
ハローワークの非常勤職員は、専門性などを基準に給与水準は3ランク制となっている。厚生労働省は2017年度について、賃金の高い就職支援ナビゲーターなど専門相談員の数を減らし、賃金の低い職業相談員などの一般相談員に置き換える措置を実施した。「雇用情勢の改善」が理由とされた。売り手市場なのだから、高い専門性は不要という理屈だ。
問題は、現場の非常勤職員に過酷な選択を迫ったことだ。「賃金の低い一般相談員に移るか、それが嫌なら辞めてもらう」という手法について、全労働の森崎巌委員長は「問題の多い民間の変更解約告知そのもので、有期労働契約の悪用だ」と指摘。公正な雇用社会を目指すべき労働行政が足元で、経験のある専門職を使い捨てる施策を厳しく批判している。
冒頭の女性職員はこう述べる。
「一般相談員は補助的な仕事ではありません。当局は『一般相談員の仕事は簡易相談』と言いますが、違います。以前とは支援対象が異なるだけで、真剣に求職者の人生に向き合う点は同じです」