「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    乱用させない闘いへ/国会前に900人/共謀罪法成立に抗議の集会

     「さあ、これからだ!」――共謀罪を創設する法案が強行採決された直後の6月15日昼、国会前では、市民や労組組合員らがこう声を掛け合っていた。

     意気消沈という雰囲気ではない。閣僚らの相次ぐ迷走答弁、次々と明らかになる虚偽説明、政権をめぐる疑惑の深刻さに、世論の批判が高まり、委員会審議を封殺する禁じ手を使わざるを得ないところまで、政府・与党を追い込んだことへの手応えが多く語られた。

     集会には900人が駆け付け、民進、共産、社民の国会議員らが「究極の強行採決」「民主主義の敵だ」と厳しく批判。総がかり行動実行委などは「法律の乱用を防ぐ闘いが必要だ」と訴え、引き続き世論を盛り上げようと呼び掛けた。国会閉会後の週明けにも国会正門前で集会を開く。

    ○発動許さず監視を/共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会 米倉洋子弁護士

     

     277もの犯罪を、予備にも至らない話し合いの段階で処罰する新たな法律が、こんな乱暴なやり方で成立させられたことに心から憤りを覚える。

     (委員会採決を省略した)中間報告は、国会法56条3の2に「特に緊急を要すると認めた時」にできるとある。災害などで急いで法律を作らないと国民の権利が守られない事態を想定しているのだと思う。

     今回緊急を要することとは何か。それは、加計学園や森友学園疑惑で追及されないために早く国会を閉じてしまいたいという緊急性しかない。権力の私物化、国会の私物化だと考えざるを得ない。

     ではなぜこんなに早く成立させなければならなかったのか。5月3日に首相が2020年までに憲法9条を変えたいと述べた。私たちの闘いを何とか押さえ込みたい、そのためにこの国会で共謀罪が欲しかったのだろう。

     

    ●重大な疑問にふた

     

     法案がテロ対策で、条約批准のために共謀罪が必要という説明がうそであることや、組織的犯罪集団や準備行為の規定が何の限定にもなっていないこと、何をしたら犯罪になり処罰されるのかが不明確で、刑事法としては最低の欠陥法であることが、あの不十分な大臣答弁からも明らかになった。

     しかも衆院では「一般人は対象にならない」と言い張ってきたのが、参院段階では「環境保護団体、人権保護団体を標榜(ぼう)していてもそれを隠れみのにした団体は組織的犯罪集団に当たることがある」と堂々と言い始めた。

     こんな重大な答弁が出たからこそ、参院で充実した審議が求められていたが、委員会審議にふたをしていきなり強行採決をした。許せない思いだ。

     

    ●監視を続けていく

     

     法案が成立してもすぐに監視・密告の暗黒な社会になるのかというと、そうではない。共謀罪を発動させない運動は、共謀罪の廃止に必ずつながる。

     政府は国民を恐れているからこそ、こんな乱暴な方法で国会を閉じようとしている。私たちは恐れられるだけの存在に十分なっていることに自信を持とうではないか。

     私たちは成立しても旗を降ろさず廃止を求め続け、不当な形で発動されないよう監視を続けていく。

     

    ○声を上げ続けよう/日本体育大学教授 清水雅彦さん

     

     今回のやり方は民主主義の否定行為だ。安倍政権は福祉と教育を切り捨て、警察と軍隊を拡大しようとしている。そんな国にしてはならない。

     政府与党は、市民に「反対の声を上げても無駄だ」と無力感を感じさせたいのだろう。「政治に関心を持ってもだめだ」と思えば相手側の思うツボ。絶対に負けてはならない。

     これまで3回の共謀罪法案廃案の時と比べ、はるかに大きな反対運動を展開できた。審議時間があれば必ず廃案に追い込めただろう。

     破壊活動防止法(1952年施行)がそうだったように、反対する声が大きければ大きいほど、法律を使わせない、発動させないことができる。

     来年12月には改憲の国民投票があるかもしれない。安倍政権はいろんなことをやってくるだろう。声を上げ、仲間をつくり、市民と野党が手を結んで闘かっていこう。改憲を失敗させ、政権交代を実現させるため力をあわせよう。