政府の「働き方改革実行計画」を受けて、残業の上限規制を審議してきた労働政策審議会労働条件分科会は6月5日、報告書をまとめた。同計画の大枠を変えず、上限規制の水準、適用除外の扱いなどで課題を残した。
上限は実行計画通り、月45時間、かつ年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合は年720時間、繁忙期で2~6カ月平均月80時間以内、単月で100時間未満と規定。45時間を超えられる月は年6回までとする。
自動車運転業務、建設事業、医師については適用を先送りし、必要な環境整備や規制の検討を行う。新技術、商品開発業務は対象を明確にした上で適用除外とする。勤務間インターバル規制の導入は努力義務にとどめられた。
実行計画の補強では、新たに指針を定め、労働時間の延長を可能な限り短くするよう努めなければならない旨を規定し、労働基準監督署による指導の根拠を定める(休日も同様)。時間外労働が月100時間を超えた場合の医師の面接指導義務付けを、月80時間に引き下げることも決めた。
36協定の締結当事者である「過半数代表」についても選出方法や必要な配慮を労基法施行規則に定める。上限規制の履行確保の点では、労働基準監督官の定員確保など、監督機関の「体制整備に努めることが適当」とした。
〈解説〉いびつさ浮き彫りに/過労死基準の上限規制
政府の「働き方改革実行計画」で残業の上限規制を過労死認定基準並みとしたことのいびつさが改めて浮き彫りとなった。
報告書は、「上限規制」を定めるとしながら、新たに行政の指針に「労働時間の延長をできる限り短くするよう努めなければならない」と書き込むという。あえて強制力のない指針をつくり、労働時間を短くするよう言わなければならないところに、この法改正の問題点が表れている。
適用を先送りされる業務は過労による健康被害が最も深刻な分野。中でも自動車運転業務については施行5年後に、一般則(年720時間)より長い年960時間の上限規制を適用するという内容で、関係労組は「ドライバーへの差別だ」と憤る。
人間の生体リズムを踏まえた、一日の休息時間保障規制(勤務間インターバル規制)も実行計画の通り、努力義務にとどめられた。
今後法案要綱の審議に移り、秋の臨時国会に改正案が出される。「高度プロフェッショナル制(残業代ゼロ制度)」を含む労基法改正案との関係でどう扱われるかが注目される。不十分な上限規制を通すために高プロ制導入を容認するという事態は避けたい。
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