解雇の金銭解決制をめぐる有識者検討会の議論が大詰めを迎えている。5月22日に示された報告書修正案では、制度創設の必要性について「一定程度認められ得る」とし、労政審での検討が適当と踏み込んだ。労働側は「制度も、検討の必要もない」と打ち切りを求めている【表(1)】。
制度創設の必要性について15日の案では「…。」と方向性を示せなかったが、今回は「多様な救済の選択肢の確保から、一定程度認められ得る」とし、労政審で有識者による専門的検討を加えつつ、引き続き検討することが適当とした。労政審での検討に移れば、法案化にさらに一歩近づく。
このまとめ方についての反応はおおむね3つに分類できる。鶴光太郎慶応義塾大学大学院教授や八代尚宏昭和女子大学特命教授、日本商工会議所、経済同友会の委員らは賛同。経団連や経営法曹会議の委員は、10年前に検討された仕組みや使用者側の申し立てを認めるよう主張し、異論を唱えている。労働側、労働弁護団の委員は「制度の必要も、検討の必要もない」と検討の打ち切りを求めた。
修正案は、原職復帰を求めず金銭だけを請求する権利を労働契約法に設ける「新たな案」を検討する方向。その際の制度設計の内容は修正でさらに曖昧になったが、解決金に限度額を設けることは維持された。未払い賃金の遡及支払いであるバックペイの限度額は「設定しない」から「引き続き議論を深める」に後退している【表(2)】。
推進派の主張の中心は「予見可能性の向上」にある。解決金やバックペイに上限を設けるよう主張するのはそのためだ。
商工会議所の小林治彦委員は「労働者の選択肢を増やすので賛同」と述べながら、「予見可能性が高まる制度」を求め、さらに「中小企業の費用負担には十分配慮を」と要望した。〃労働者のため〃と言いながら〃解決金は安くしてね〃という、あけすけな主張である。経済同友会の岡野貞彦委員も金銭の補償額は「賃金の半年分から1年半の範囲内」と主張するペーパーを提出した。
報告書は今月中にもまとめられる見通し。
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