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    10年目の正念場の闘いへ/小野寺利孝弁護団長/悲劇直視しない政府に抗議

     建設アスベスト訴訟は2008年の提訴以来、原告は763人に上る。「命あるうちの解決」を訴え、石綿被害者補償基金制度の創設を求めているが、国は敗訴と控訴を重ねるばかり。首都圏建設アスベスト訴訟の小野寺利孝弁護団長は「10年目の正念場の闘い」を訴えた(5月19日、都内)。要旨を紹介する。

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     無念の思いで世を去った原告団の面影を思うと、胸が張り裂けそうだ。「命あるうちの解決」をスローガンに掲げながら、9年もかかったことは慙愧(ざんき)の念に耐えない。

     じん肺は最古にして最大の職業病と言われる。40年間さまざまな裁判に関わってきたが、毎月のように原告の訃報(ふほう)を受け取る、こんな弁護団の経験は初めてだ。

     国は5度も断罪されながら、原告団が亡くなっていく悲劇を全く受け止めようとせず、ひたすら高裁で争っている。このまま最高裁まで争い、そこで国が負ければ、勝訴した(一部の)原告だけに賠償をして終わりとするのか。このような姿勢が許せるか。

     国民の命と健康と人間の尊厳を守ることこそ国の最大の責務。政治解決に動こうとしない政府と、政治の貧困に対し、満腔(まんこう)の怒りをもって抗議したい。

     建材メーカーの法的責任は幾度も断罪された。利潤追求を優先し、建設従事者の命と健康を奪う企業が存在を許されていいのか。許されていいはずがない。この点も抗議したい。

     10月には神奈川第2陣訴訟の横浜地裁判決、同1陣の東京高裁判決がある。10年目の今年は、正念場の闘い、全面解決に向けた最大のヤマ場だ。高裁で勝利し、世論を高め、政治を動かし、全面解決へ団結してがんばろう。