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    インタビュー/地方から世論起こそう/共謀罪で労働運動が犯罪に/自治労・荒金廣明副委員長

     政府が今国会での成立を急ぐ共謀罪創設法案。捜査当局の判断次第で労働運動を捜査対象にできる仕組みだと指摘される。自治労で政策を担当する荒金廣明副委員長は違法捜査や運動への弾圧が合法化されるようになると指摘し、特に地方での世論喚起の取り組みを呼び掛けている。

     

    ●労働運動がターゲット

     

     共謀罪は、犯罪を未然に防ぐというより、労働運動そのものが犯罪とみなされる可能性のある法律と考えている。

     昨年発覚した、連合大分が入居する施設の敷地内に大分県警が隠しカメラを仕掛けていた事件。選挙運動が禁じられている特定公務員の出入りを確認するためと説明していたが、県警は後に謝罪した。狙いをつけた人物を監視するために、盗撮、尾行し、犯罪をでっち上げようとしたのだ。

     もう一つは、沖縄平和運動センター議長、山城博治さんに対する長期勾留。新基地建設に反対する活動の際の軽微な罪で150日超も勾留し、証拠隠滅の恐れがないのに家族の接見や差し入れさえ認めないという、徹底した弾圧だった。

     このような違法捜査や、運動への弾圧が合法化される恐れがある。

     法案は、捜査当局が「組織的な犯罪集団」と認定すれば関係者を一網打尽にできる仕組みだ。例えば電力会社に対する脱原発の抗議行動や、国会前での戦争法反対の行動を計画することが「組織的な業務妨害の共謀」とされ、関係者らが事情聴取や家宅捜索を受け、逮捕、長期勾留されるということも考えられる。

     現役の公務員であれば、起訴休職となり、最悪の場合、懲戒免職になる。公平委員会で覆す道もあるが、いったん「被疑者」のレッテルを張られると、無罪でも、住民と接する業務には就けなくなるだろう。

     信念を持って行動・主張しようとする人々が「時の権力に歯向かえばこうなる」と、萎縮したり、政府に物申す運動が敬遠されるようになることが懸念される。

     

    ●戦前の特高警察の再来

     

     警察には無理な捜査を奨励する風潮が今も根強くある。令状なしにGPS(全地球測位システム)捜査を行い、最高裁に断罪されたのはその一例。えん罪を起こしても担当者はほとんどおとがめなしだ。

     そこへ、密告を奨励する現法案が成立するとどうなるか。スパイを潜入させ、ニセの告発を口実に組織を壊滅させた、戦前日本の特高警察の手口が再びまかり通るようになりかねない。疑心暗鬼に満ちた監視社会にしてはならない。

     

    ●署名39万筆を集約

     

     特に地方での世論喚起の取り組みを重視している。東京だけでアピールしても法案強行は止められない。危険性を広く住民に知らせる取り組みを都道府県本部に発信したところだ。

     法案に反対する署名は第1次集約で39万筆集めた。職場の関心は高いが、「よく分からない」という声がまだ多い。法務大臣でさえ理解していないのだから当然といえば当然だ。想定以上に国会の動きは早く、取り組みの速度を強めなければならない。

     今の法案が成立すれば、地方公務員の仕事は大きく変わる。警察から住民の個人情報の提供を要請されても、守秘義務を理由に断っているが、そうもいかなくなるだろう。警察の下請けのように住民を監視する仕事への変質を許すのか、住民のための仕事をするのかが、問われている。