「違法な埋め立て工事の即時中止・辺野古新基地建設断念を求める県民集会」(辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議主催)が3月25日、開かれた。米海兵隊キャンプ・シュワブのゲート前の国道の両側を、3500人を超える参加者が埋め、新基地建設阻止への決意を再確認した。那覇市から高速道路でも1時間以上かかり、路線バスでは3時間はかかる。駐車場もない路上集会だ。11市町村から「島ぐるみ会議」のバスが出た。このような集会が頻繁に開かれることが、沖縄の現状を象徴している。
●意味深長な知事の言葉
今回の目玉は、初めて翁長雄志知事が参加し、埋め立て承認の「撤回」を「必ずやる」と宣言したことだ。「撤回」で工事を止められるのか、裁判で勝てるのか、という懸念が指摘されており、政府はさまざまな法的対抗措置によって工事続行に自信を持っていると報じられている。一方で、実効性のある権限行使を知事に求める声も強まっていた。知事の参加は、求心力を取り戻すとともに、県民があらためて一体となる機会になった。ただ、どのタイミングで、何を根拠に「撤回」とするのかについては相変わらず慎重だ。引き続き政府との神経戦が続くことになろう。
「新たなステージに入っている」という知事の言葉も意味深である。最高裁で敗訴に終わったステージから次の段階に入っているという認識だ。「米軍基地は沖縄経済発展の最大の阻害要因だ」とあらためて強調したのは、自治権論ではなく経済発展論、平等・公平論を裁判の軸にする布石かもしれない。「抑止力のために菅義偉官房長官のふるさとである秋田県の十和田湖を埋めるのか。宮城県の松島を埋めるのか。琵琶湖を埋めるのか」と畳みかけた。撤回を巡る議論では、県民投票で再度民意を確認するべきだとか、出直し選挙で再選されることが条件だという意見もある。これらが念頭にあるのかもしれない。
●自民県連は移設容認へ
県民集会をトップで報じた26日付「琉球新報」1面の2番手記事は、自民党沖縄県連が政策転換したというもの。現状の「辺野古移設を含むあらゆる可能性を追求」を、「辺野古移設を容認し、(普天間の)早期返還の実現を図る」にするという。自民党はこれまでの選挙では辺野古問題について争点隠し、あいまい化を常としていたが、今後は政府方針に沿うことを明確にする。民意を無視し強権と実力で基地建設を強行する政権の、地元の受け皿としての役割を担う決断をしたということだろう。沖縄は確かに新たなステージに入った。(ジャーナリスト 米倉外昭)
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