森友学園問題に世間の注目が集まる陰で、「働き方」をめぐるある法案の審議が着々と進んでいる。求人トラブル対策を行う職業安定法改正法案だ。月内にも成立する見込みだが、国会審議では大きなほころびが明らかになっている。
求人内容と実際の労働条件が著しく異なる「求人トラブル」が社会問題化したことを受け、厚生労働省は昨年来、「求職者保護」のための職安法見直し作業を進めてきた。法案は求人募集の際、労働条件を明示しなければならないとし、虚偽求人には罰則を科すという内容。賃金を多く見せる「固定残業代」などの仕組みを募集時に明らかにすることで、トラブルの防止を図るのが狙いだ。
ところが、この「明示」をいつ行うかで、国会ではちょっとした議論になっている。普通に考えれば、ハローワークや民間職業紹介業者が示す求人票に労働条件が明記されるべきだが、政府解釈はそうではない。労働契約締結の直前でもいいというのだ。
3月15日の衆院厚生労働委員会で、この点を質問した民進党の井坂信彦議員に対し、厚生労働省の担当官は求人広告の紙面スペースなどを理由に挙げ、「全体としては労働契約を締結するまでに明示しろという解釈だ」と答弁した。
さらに井坂議員は、求人面接を3回、4回と重ね、最終選考をくぐり抜けた段階で、「実は有期雇用契約です」と告げても違法ではないのかと追及。塩崎恭久厚労相は「必ずしも違法となるわけではない」と担当官と同様の説明を繰り返した。当初示した労働条件の変更も契約締結までに変更点を示せばよく、契約締結の「5秒前」でも違法ではないという。
同様の質疑は23日にも共産党議員との間で行われている。同党の倉林明子議員は「求人内容の変更を直前に認めるということになれば、違反を誘発する。求人詐欺に法的根拠を与えかねない」と批判した。
同法案は雇用保険法改正などとの一括法案。予算関連法案もまとめられていることを理由に、年度内成立が急がれてきた。既に衆院を通過し、30日にも参院で採決される見込み。労働条件明示のタイミングについて、厚労省令に具体的に定めるなどの答弁を引き出せるかが焦点となる。
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