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    解説/これからが本番だ/人手不足を追い風に

     春闘は「4年連続のベア獲得」で最初のヤマ場を越えた。物価上昇がほとんどない中で昨年、今年とベアを得た。この成果を中小に広げられるか、さらに〃大手超え〃の実績をどれだけ積めるか、非正規労働者の底上げ、安定雇用につなげられるか、これからが本番だ。

     過年度物価上昇率がほぼゼロでは、全体でベアを要求することさえ、以前なら考えられなかった。経営者が政権の顔色をうかがっている側面もあるが、総じて賃上げの社会的責任に理解を示すなど、国内経済に与える意義を否定しにくい状況が生じつつある。少し前まで経団連がベアを全否定していたことを考えると、隔世の感がある。

     問題は二つある。1つは水準。今年もおおむねトヨタ基準(千円)の相場が形成されている。この水準では経済の自律的成長を後押しするには十分ではない。企業のカネ余り、消費低迷は依然続く。

     もう一つは広がり。中小企業の組合が主体のJAMでは半数の組合が3年間ベアがないという。労使関係のある職場でさえそうなのだから、組合のない職場への波及はさらに厳しい。親会社労組による支援、公正取引の実現、社会的機運の醸成などを含め、中小の交渉が本格化するこれからが本番だ。

     今年は、人手不足を背景に、非正規労働者の処遇改善の取り組みが昨年以上に進められている。正社員を上回る賃上げ、無期転換ルールに関連した要求も多い。労働時間短縮や休息時間確保などの要求も交渉のテーブルに乗せられている。格差に苦しむ人々に身近な春闘となるよう、今後の展開が注目される。

    ○〈自動車総連〉経営側の理解広がる

     

    「『ベア前年割れ』という見出しが立ちやすい状況だが、4年連続の賃上げに適正な評価を」。15日、東京都港区にある自動車総連本部で会見を開いた、相原会長は後続する中堅・中小への影響を念頭に、こう語った。

     17年を含む4年間のベアの合計はトヨタが9500円、日産が1万3千円、本田技研が8300円。大きな物価上昇はなく、世界経済の先行き不安が高まる中、4年連続で人件費総額が積み上がるベアを引き出したことへの理解を求めるとともに、今後の中小の底上げに水を差さないよう配慮を求めた発言だ。

     その上で、会長は「賃上げが経済にインパクトを与える要素であることへの認識が定着してきたことは成果だ。賃金の社会性を否定する経営者は、今回の交渉の中で見たことも聞いたこともない。賃上げの流れを止めれば将来不安は払しょくされない。そうした理解が労使で広がったことも大変大きな成果だ」と語った。

     中小722組合のベアなど賃金改善要求は3307円で、昨年より100円以上高い。産別は今後の中小の交渉に力を割く構えだ。

     

    ○〈電機連合〉減収減益でも千円確保

     

     電機連合の大手組合はベア1000円(昨年は1500円)の回答となった。野中孝泰委員長は「減収減益基調の中でも4年連続の賃上げを勝ち取れた」と胸を張り、経営側の判断も評価できると語る。

     今年の闘争からは東芝とシャープが離脱した。4年連続の月例賃金引き上げにこだわったものの、「来年度事業計画で減収を見込んでいるところもあり、大手11組合をまとめるのはすごくしんどかった」(野中委員長)。それだけに、回答後はほっとした表情に。

     18歳見合いの電機産別最賃も、これまでのような500円刻みではなく、1000円引き上げで足並みをそろえた。

     一時金は明暗が分かれた。交渉方式を取る6組合をみると、日立、富士電機、パイオニアが額・月数とも前年よりプラス。三菱、沖電気、明電舎はマイナスとなった。

     非正規労働者の正規化もテーマになり、217組合のうち103組合が今後挑戦する方針だという。電機の職場には食堂や警備、清掃分野を含め7万人近い有期雇用労働者がいる。産別方針は、正社員化を掲げながら、少なくとも「多様な正社員」「均等待遇に基づく無期雇用」を目指すことにしている。組織化を含めて単組の取り組みを促していく考えだ。

     働き方改革の関係では、「労使共同宣言」を発表した。労働時間管理や職場のコミュニケーションの状況がどうなっているかを把握した上で、対策を講じていきたいという。