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    時の問題/ガイドラインの積極活用を/適正な把握、使用者に義務付け

     厚生労働省がこのほど、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」をまとめました。従来の国の考え方をあらためて整理したもので、使用者に理解を促す目的です。始終業時の着替えや掃除、職場から離れられない「手待ち時間」、研修の受講は労働時間であると例示。労働者が労働時間を自己申告する際のルールを示しています。

     国が昨年末策定した「過労死等ゼロ」緊急対策の一環。厚生労働省によると、従来の通達と位置付けは変わらず、労働基準監督官の指導内容を変えるものでもありません。過去の裁判例などを踏まえ、労働時間に関する国の考え方を、使用者に分かりやすく示すためにまとめたといいます。

     新たに加えられた「労働時間の考え方」では、「明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間」としました。黙示の指示とは、上司から具体的に指示されていなくても業務遂行に必要な仕事をしていれば指示があったとみなされること。「労働者が勝手に残業していた」という言い逃れは許されません。

     ガイドラインは「使用者の指揮命令下に置かれていると評価される時間については労働時間として取り扱う」として、三つのケースを例示。始終業時の着替えや掃除、手待ち時間、業務上義務付けられている研修や教育訓練、学習などの受講――は労働時間だとしています。

     

    ●適正な申告の保障を

     

     自己申告制についても特筆しています。申告された内容が、職場への入退場記録やパソコンの使用時間記録と大きくかけ離れている場合、実態調査を行い、労働時間の修正を行うよう使用者に求めています。

     残業の上限を設け、それを超える申告を認めないなど、適正な申告を阻害する行為を禁止。実際は36協定を超えて働いているのに、そうでないように装うことが慣習的に行われていないかについての確認も求めています。適正な申告を行うよう、労働者と労働時間管理者に十分な説明を行うことも盛り込まれました。

     案外守られていない職場も多いのではないでしょうか。これを機に、職場を点検し、必要な是正を行うことが求められます。