連合主要産別の要求基準がほぼ出そろった。物価上昇が低調で、世界経済の先行き不透明感が強まる中でのベースアップ春闘。人手不足という追い風を生かしながら、共闘を強め、底上げ、長時間労働の是正、安定雇用実現など多岐にわたる取り組みが展開される。
要求は各産別とも、昨年同様におおむね1~2%の水準となった。過年度物価上昇などを勘案した従来の要求設定方式の転換に踏み出した昨年の成果も引き継ぐ。政府が「前年並みの賃上げ」を求め、経団連もベアを認める姿勢だが、電機連合の野中孝泰委員長は「交渉は相当厳しくなる」と表情を引き締める。
電機は今年も3千円以上を掲げ、主要メーカー労組はスト権を確立して交渉する。主要企業の大半が業績を下方修正する情勢に加え、経営側には4年連続のベアであること、過去3年ベアを行ったのに経済の好循環に至っていないことへの不満があるという。
特に中小に吹く風は厳しい。JAMは過去3年間ベアゼロの組合が約半数に上る。今年は全ての組合が賃金の社会性を意識した個別賃金要求に取り組むよう呼び掛け、打開を図る構えだ。昨年同様、正規、パートを含めてベア2%基準を掲げるUAゼンセンも危機感を募らせる。松浦昭彦会長は1月末に大阪市内で開いた中央委員会で「経団連は賃上げに前向きとされるが、ゼンセンの組合のある企業は経団連方針にほとんど左右されない。黙っていてもおこぼれは回ってこない」とハッパをかけ、「顔の見える共闘」の強化を求めた。
非正規の課題では、有額の時給引き上げ基準を設ける産別が増えつつある。有期雇用の無期転換ルールが来年動き出すのを前に、雇い止め防止などの点検を掲げる組織も少なくない。中でも電機連合は「無期転換者は正社員とする」との考え方をまとめている。
●追い風となる好条件も
公正取引や適正価格の実現、付加価値の適正循環の取り組みも広がる。JR連合はグループ会社の賃上げ支援を引き続き重視。JAMは適正価格の交渉を行うよう自社に要請する取り組みを展開し、フード連合は親企業・大手労組による中小支援を行う考えだ。
電通や三菱電機など捜査の手が次々に入る中、長時間労働の是正は焦眉の課題となっている。36協定特別条項を年間720時間以下に急いで下げるよう呼び掛ける自動車総連をはじめ、休息時間保障、時間外割増率引き上げなどに各産別が取り組む。
これらさまざまな課題の実現を図るうえで追い風になるのが、労働需給のひっ迫である。従来以上に労働環境改善に関心が高まっていることもある。好条件を生かしつつ、共闘を強め、成果を獲得できるか、注目される。
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