民間放送局の労働組合でつくる民放労連が1月28、29の両日に都内で開いた臨時大会では、長時間労働対策をめぐり白熱した議論が交わされた。制作プロダクションなど下請け(構内)労働者の処遇改善を今年も重視。沖縄での基地建設への抗議運動を取りあげた東京MXテレビ「ニュース女子」問題について放送法違反を指摘する決議も採択した。
●過重労働を付け回すな
討論では、初日からキー局、準キー局の組合から、長時間労働の現状や交渉状況が次々に報告された。ある準キー局労組は、ワイドショー番組でニュースを解説するパネルの作成を、深夜一人で長時間行っているため、全国的に有名な人気番組でも人材が定着しない実情を紹介。改善に向けて人員増と相応の財源確保を要求し、必要な措置を経営側に約束させたという。
キー局の組合が集まる関東地連の代表は「グループの制作会社では家に連日帰れず、帰れても家の壁にタッチして再び出勤するという状況だ。制作会社に(業務を押し付けることで)『ブラック化』を付け回しし、放送局だけが身ぎれいになることは絶対にさせてはならない。そのためにも『人を増やせ』と要求していかなければならない」と繰り返し強調した。
斉田公生書記長は、電通の過労自死事件など長時間労働に対する社会の目が厳しくなっている状況を指摘し、「会社を(交渉に)引き出す絶好のチャンス。生活しやすい働き方を労働組合から提案していかなければならない」と提起した。
●下請けも処遇改善
制作会社など雇用主は違うが、同じ局で働く構内労働者の処遇改善に今年も取り組む。16春闘では39組合1支部が奨励金やクオカードの支給、食堂無料開放などを行わせた。前年と比べて獲得組合数は若干減ったが、この取り組みはすっかり定着した、と斉田書記長は語る。
交渉では、「構内労働者の要求に回答が出ない限り決着させない」との姿勢で交渉する組合もあり、派遣料金そのものを引き上げ、一人当たり月額30万円以上にすると確約させた組合もある。
京都放送労組は昨年、関連会社でテロップ作成に従事していた女性組合員の働かせ方が、「違法な偽装請負だ」と労働局に申告。いったん適法の判断が示されたが、粘り腰の運動を繰り広げ、是正指導させた。労働局の判断を覆させたのは極めて異例。1月に直接雇用を実現し、現在、無期雇用化を要求している。
●独自に質問状送付
放送業界をめぐっては、高市早苗総務相が放送局の「停波」の可能性を指摘するなど、放送の社会的使命が揺らいでいる。直近では東京MXテレビ「ニュース女子」問題がある。BPO(放送倫理・番組向上機構)にも提訴されている。
化粧品大手DHCの子会社が制作した持ち込み番組で、他局にも要請があったが、考査の段階で不適切とされ、放送されていない。資本力の乏しいMXテレビが飛びついた形だという。
この問題では、政府による沖縄弾圧に抗議する決議の中で放送法違反を指摘。関東地連と沖縄地連は独自に連名の質問状を同社に送付した。MX社内には加盟組合もあり、民放労連は今後の推移を見定めて対応を検討するとしている。
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