安倍政権の経済政策「アベノミクス」の一環として進められている「働き方改革」。同一労働同一賃金や長時間労働の是正など、労働組合のお株を奪うような施策を並べています。これをどのように見て、どう対処すればいいのかを考える上で参考になる好著です。
安倍政権は「世界で一番企業が活躍しやすい国」づくりを目指すとしてきました。本書は、その延長線上に「時間や空間に縛られない自由で柔軟な働き方」があると指摘。これは企業本位の改革であり、企業にとっての自由や柔軟化である点に注意を呼び掛けています。
長時間労働を是正するために上限規制を設けるといいます。しかし一方で、労働時間の規制を外す労働基準法改悪案を通そうとしています。上限規制ができたとしても、それが適用されない労働者を増やしたのでは何にもなりません。安倍流改革には、こうした矛盾が少なくないとし、「労働時間」「雇用の流動化」「賃金」の各テーマごとにごまかしを暴いています。
働き方改革のまやかしやペテンを批判するだけでいいのかという問題提起も。労働者の中に労働条件向上への期待があることを考えれば、「働き方改革反対!」のスローガンだけでは不十分。政府にお任せするのは論外ですが、労働組合として「ブラック企業をなくし、本物の働くルールを確立する取り組みを本気で飛躍させること」(故井上久全労連事務局長)が必要だといいます。(学習の友社発行、税別千円)
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