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    「個別賃金元年」の春闘に/JAM中央委/適正価格実現で新たな要求

     中堅中小の金属製造業の労組でつくるJAM(35万人)は1月20日、都内で中央委員会を開き、2017年春季生活闘争方針を決定した。「個別賃金元年」と位置づけ、「労働の価値にふさわしい社会的水準」への賃金引き上げをめざす。公正取引実現の課題でも、適正価格を目指して取引先に要請するよう経営者に求めるなど、新たな取り組みに踏み出す。

     

    ●「原資生み出す闘争に」

     

     17闘争方針の特徴は、産別が設定する指標(高卒直入30歳・26万円、同35歳・30万5千円など)を踏まえ、賃金の引き上げ幅だけでなく、賃金の絶対額を意識した取り組みを強く求めている点だ。賃金制度がなく賃金実態が不明の多くの中小労組で、自社の賃金、社会水準との差を把握し、ふさわしい水準への到達を中期的に進めていく。賃金要求の考え方は、定期昇給相当分など賃金構造維持分とは別に、昨年と同額の6千円を基準に「人への投資」を行うとした。

     河野哲也書記長は、「単純に6千円を求めるのではなく、あくまでも単組の水準を確認し、賃上げを求める取り組みを」「個別賃金を前に進める『元年』として、闘争体制の構築を進めたい」と語った。

     公正取引実現の課題を、賃上げと「車の両輪」として取り組む。経営者に対し、価格や取引条件の見直しを取引先に要請するよう求めることも決めた。

     昨秋に行った産別内の取引実態調査では、価格引き上げを取引先に要請した企業はわずか3割。これをさらに増やそうと、「聖域」だった納入先の発注単価に踏み込む。

     宮本礼一会長は公正取引ルール確立の社会的気運の高まりに手応えを示しながら、「17闘争はこれまでのような『賃上げ原資の配分春闘』ではなく、『賃上げ原資を生み出す春闘』へと転換させていく。そのためには『サプライチェーン全体での付加価値の適正配分』を産業界全体で確立することによって、『価値を認め合う社会』へ転換させなければならない」と強調。JAM結成以来の悲願である公正取引実現へ各単組の奮闘を呼び掛けた。

     

    〈用語解説〉個別賃金要求

     

     「高卒30歳勤続12年・生産労働者」などの個別銘柄の賃上げを交渉し、全体の賃上げを図る要求方式。組合員の生活や労働の対価という要素をより考慮した交渉ができ、他企業、他産業との格差是正に取り組みやすいなどの利点があります。自社の賃金実態を把握し分析する作業が必須で、企業の枠を超えた労組間の情報開示や連携が必要になります。