安倍政権は昨年末、TPP(環太平洋経済連携協定)の承認と関連法案採決を強行した。しかし、同協定からの離脱を明言してきたトランプ氏の米大統領就任で発効する可能性はほぼゼロに。これでTPP問題は終わったのだろうか。自由貿易協定をめぐる今の状況について、TPP反対運動を進めてきたアジア太平洋資料センター(PARC)の内田聖子事務局長に話を聞いた。
●2国間交渉が柱に
――TPPはもう終わったとみていい?
内田 トランプ氏の大統領就任で発効は難しいでしょう。しかし、日本についていえば、今後日米の2国間交渉が行われ、米側が好ましくないと考える日本の規制・制度を撤廃せよと迫ってくるのは確実です。衆参両院で採決した以上、国際的には日本の意思としてTPPの内容を認めたことになります。ですから、2国間交渉はTPP水準から出発することになります。以前から日本は日米並行協議で米国要求を飲まされており、米国は強気で臨んでくるでしょう。
――発効の見込みがないTPPを強行採決したのはなぜ?
内田 アジアの国々とは現在、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)協定について交渉しています。日本政府はここにTPP基準を持ち込もうとしています。市民社会が問題視している新薬のデータ保護期間延長や、多国籍企業に有利なISDS(政府と投資家の紛争解決手続き)条項などです。日本はまるでミニ米国のように見られており、インドなどから批判されています。
――そのRCEPを含め、多国間の自由貿易協定はどうなりそう?
内田 TPPとRCEPのほかにも、欧州連合と米国間のTTIP、欧州連合とカナダ間のCETA、さらにサービス貿易に関わるTISAなど、この間、さまざまなメガ貿易協定が追求されてきました。いずれも交渉はうまくいかず、暗礁に乗り上げていると言っていいと思います。今後どんな枠組みで進めていくのかが大きな課題。2国間交渉を含めどんな形になるかは分かりませんが、問題は、誰のための協定なのか、誰がイニシアチブを握るのかということです。
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