日本航空(JAL)が2010年に行った整理解雇の過程で、組合のストライキ権確立に不当な介入が行われた事件で最高裁は9月23日、会社側の上告を棄却し同社の敗訴が確定した。組合側は「整理解雇手続きに重大な違法行為があったことを認めたもの」との声明を発表し、同社に解雇問題の全面解決に向けた交渉に応じるよう求めている。
この事件は、JAL経営破綻による会社更生手続き下の10年11月、管財人だった企業再生支援機構の幹部が組合(日航キャビンクルーユニオン、日航乗員組合)執行部を呼び出し、「組合が争議権を確立したら、更生計画で予定されている3500億円の出資はできない」と発言。それにより組合側の争議権はとん挫、あるいは正常に権利行使できない状況に追い込まれた。同年12月末には多くの組合員を含む165人の整理解雇が強行されている。裁判では、機構幹部の発言が組合への支配介入に当たるかが争われた。
東京都労働委員会は不当労働行為と認定。会社は命令取り消しを求めて訴えたが、東京高裁は15年6月「会社更生法の下での再建中という非常事態であっても、支援機構の発言は労働組合の主体性、自主性、独立性を阻害する不当労働行為」と断罪した。今回の上告棄却で判決が確定した。
●問われる解雇の正当性
165人のパイロットと客室乗務員の解雇問題については、解雇が有効かをめぐり別に裁判で争われていたが、裁判所は「管財人の合理的な判断のもとやむをえなかった」などとして解雇有効と判断。15年2月に最高裁で確定している。
しかし今回の不当労働行為事件の判決は、管財人の判断に基づいた解雇の正当性に改めて大きな疑問を投げかけている。日本航空キャビンクルーユニオンの古川麻子委員長は、9月28日の記者会見で「労働組合の独立性を脅かす管財人の違法行為のもとで整理解雇が行われた。会社は解雇問題の解決に向けた協議を始めるべき」と指摘。乗員組合の篠崎恵二委員長は「現場では人員不足が恒常化しているが、会社はさらなる労働強化を強いて労使の信頼関係が悪化している。安全運航の基盤は健全な労使関係にある。そのためにも整理解雇問題の解決が急務だ」と訴えた。
●高まる国内外の声
ILO(国際労働機関)は昨年11月、「会社と組合との意義ある対話を維持することの重要性を、今一度強調する」とした3回目の勧告を出した。勧告を受け塩崎恭久厚生労働大臣は「労使が自主的解決に向けて努力しなければならない」と答弁している。
組合側は会社に対し、解雇者の職場復帰・再雇用と救済、さらに労使関係の正常化と安全運航の確立――を求めている。
会見で古川委員長は「国民の安全と良質なサービスを提供するためにも、一日も早い解決を」と訴えた。
〈メモ〉高裁判決のポイント
憲法28条と労働組合法に基づき、争議権確立を「会社との交渉において対等性を確保するための有力な手段で、労働組合の最も根幹的な権利の一つ」と指摘。管財人の発言は、その根幹への介入であり、会社更生手続き下であっても許されないとしました。さらに「会社がその存立のために争議行為を阻止したいのであれば、(不当労働行為でなく)労働組合との間で何らかの妥協を図るしかない」と述べています。
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