中小企業の解雇争議で労働組合が掲げた幟(のぼり)の表現が「(経営者への)名誉毀損に当たる」として、東京地裁と東京高裁が相次いで組合員らに350万円もの損害賠償を命じた。これに対し、労働側弁護団は「名誉毀損に関わる判例法理を無視した判決。労働組合にとって生命線である言論活動を不当に制限するもので看過できない」と批判。最高裁に対し、弁論を開いて不当判決をただすべきだと訴えている。
東京の荒川区にある老舗の印刷会社「富士美術印刷(フジビ)」が2012年9月、子会社のフジ製版を破産させて退職金なしで従業員を解雇した争議。解雇の是非とは別に会社側は、組合の宣伝活動を「名誉毀損だ」と逆に訴え、その判決が地裁と高裁で出され、現在、最高裁に上がっている。
昨年7月の高裁判決は、「フジビは解雇された労働者を雇え」「フジ製版は計画的偽装倒産である」「安い給料で使い捨て、泣き寝入りしないぞ」など、組合が掲げた幟の表現を名誉毀損に当たるとし、地裁と同様に350万円の損害賠償を命じている。
12月26日には、労働側弁護団が記者会見した。日本労働弁護団の会長を務める徳住堅治弁護士は「判決を呼んでびっくりした。従来の判例では、刑事事件ならその表現が事実かどうか、民事なら意見・論評の前提となる重要な部分が事実かどうかを判断することになっている。判決はそうした検討をせずに名誉毀損を認めており、判例無視だ。幟の『泣き寝入りしないぞ』というのは決意の表明であって、会社の社会的評価とは無関係だ」と憤った。
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