雇用仲介事業の規制見直しを審議してきた労働力需給制度部会(部会長・鎌田耕一東洋大学教授)は12月7日、報告書をまとめた。実際と異なる求人に一定の規制をかける一方、人材会社のビジネスチャンスを広げる規制緩和を進める内容。年明けから法案要綱審議に移り、来年通常国会での職業安定法改正をめざしている。
社会問題化している求人トラブルの問題で、報告書は、求人募集で示した内容に変更・追加がある場合や、あらかじめ幅を持たせている場合、書面による労働条件明示義務を求人事業者に負わせる。
虚偽求人を行った事業者には罰則を設ける。だが、「故意」の立証は難しく、実効ある文言にすべきとの労働側の主張は取り入れられていない。
求人の賃金総額に残業代を含む「固定残業代」の問題では、基本給額の明示義務にとどめた。固定残業代は不払い残業の温床で、法で追認することを疑問視する声もある。
求人広告には初めて規制をかける。募集内容と実際が異なる場合、求人事業者に変更を依頼することなどを盛り込むが、強制力のない指針の改正にとどめる。
●求職者情報を共有化
このほか、人材企業のビジネスチャンスを広げる規制緩和が続く。
職業紹介事業の許可要件を緩め、事業所の外での職業紹介を、個人情報やプライバシーの保護を条件に初めて認める。
職業紹介事業で得た求人・求職者情報と、同じ人材会社の労働者派遣事業の個人情報とを、別々に管理する義務をなくす。人材会社の多くが職業紹介と派遣を兼業しており、ハローワークから得た求人情報が、自社の派遣事業の営業に使われている現状を助長すると批判される。
求職・求人情報を複数の人材会社間で共有することも、「本人同意」を条件に認める。求職者と人材会社との力関係上、自由意思が保障されるか、個人情報が適正に管理されるか、課題は多い。
「人買い業者の横行を招く」と組合関係者が強く批判していた、「委託募集」の許可制の廃止は、見送られた。
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