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    国の負担割合最低に/雇用保険法の見直し

     雇用保険部会(部会長・岩村正彦東京大学大学院教授)は12月8日、雇用保険法改正の内容をまとめた。給付額の上下限額の増額や、解雇や倒産で離職した中堅層の失業給付期間延長を打ち出した。一方、労使が負担する保険料率を賃金の0・8%から0・6%に引き下げ、国庫負担割合も3年間に限り過去最低の水準に落とす。

     報告書は、失業給付について、現行の日額の下限1832円、上限6370~7775円から136~395円積み増す。下限額が地域別最低賃金の水準を下回ったことによる措置。

     給付日数は、解雇や倒産などによる離職で、被保険者期間が1~5年未満の場合、30~35歳未満は現行の90日から120日に、35~45歳未満は同90日から150日に延ばす。自己都合による離職は含まれない。

     震災などで離職したケースでは、現行制度に代えて120日の給付延長する制度を新設するほか、雇い止めされた人の給付日数を延長する暫定措置を来年3月末の期限以降も続ける。

     遠隔地の求人に紹介した場合の「転居費用」補助の対象に、民間の職業紹介で就職したケースも加える。教育訓練への給付も拡充する。

     

    ●給付薄いまま財源削減

     

     一方、3年間の時限措置として、国庫負担を本来負担すべき水準の10%にまで削減。雇用保険料の労使負担も0・6%に下げる。ともに過去最低の水準だ。

     雇用保険の積立金が過去最高の6兆円に上ることなどを理由としているが、これは2000年代以降の給付抑制によるもの。00年、03年の雇用保険法改正により、失業給付日数はそれまで90~300日だったのが、自己都合による離職は上限150日に削減し、賃金に対する給付率は1割も引き下げた。その後の改正で失業給付を受けられる資格要件も狭めている。

     審議で、労働側が給付の拡充を訴えたのに対し、使用者側は「(給付の)引き上げは再就職促進を阻害する」などと反対していた。

     十分な失業給付がなければ、生活の糧を得るために劣悪な求人でも飛びつかざるをえない。劣悪な雇用をなくすうえでも給付水準の回復が必要だが、拡充は一部のみで、負担の削減が優先された。国、企業の責任を弱める動きには十分に警戒しなければならない。

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    コメント: 1
    • #1

      労働者 (金曜日, 21 1月 2022 11:10)

      連合の吉野会長のコメントが聞きたい