経済産業省がこのほど、兼業・副業や、フリーランスなど「雇用関係によらない働き方」に関する研究会を発足させ、議論を開始した。個人請負など労働者が個人事業主として働く労働市場を広げるためのルールづくりや制度、支援策を検討し、今年度内に報告書をまとめる。
研究会立ち上げは、経産省が4月にまとめた「新産業構造ビジョン」の分析を踏まえている。近い将来、人工知能などの技術革新により、就業構造や「企業と個人の関係」が劇的に変化するとした文書だ。
●競争力強化が目的?
「雇用関係によらない働き方」研究会は11月17日、第1回会合を開いた。そこで配られた資料では、雇用関係だけを前提にした働き方では「働き手や企業双方において競争力を低下させてしまう恐れが指摘されている」と説明。世耕弘成経産相の「安倍内閣にとって『働き方改革』は最大のチャレンジであり、『時間・場所・契約にとらわれない柔軟な働き方』は働き方改革の『鍵』となる」(10月20日、委員らとの懇談)との発言を紹介している。
雇用関係によらない労働市場の発展と、そのための官民の連携を提起したうえで、検討の論点として、人材育成システム、働き手の保護(労働時間との関係や「働き手代表組織のあり方」)、社会保険料負担のあり方、企業と働き手のマッチング機能の強化――を例示した。
これらの記述からは、検討の対象が労働問題だという認識と、労働者性の強い働き方でありながら個人事業主として扱おうという狙いが読み取れる。
●厚労省とも連携
委員は、学者、人材会社系の研究機関の研究員、インターネットを通じて労働力をプールし仕事を受発注する業界の団体などがメンバー。第1回会合には、人材派遣会社や、個人請負の働き手を派遣する会社の経営者が出席した。フリーランスで働く当事者も参加し、育児との両立が困難で企業を退職した女性は「フリーランスになることで救われた」と述べている。
兼業・副業では、経産省は優良事例集を今年度内にまとめる予定。同省担当者は「開業率の向上や、社員のポテンシャル、スキルをより有効に生かせるよう、兼業・副業を根付かせるための下地づくりを行う」とし、必要な法改正は「厚生労働省と相談しながら進めていく」としている。
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