労使の合意で残業時間の上限を決める36協定のあり方を見直す検討会の第4回会合が11月15日、厚生労働省で開かれた。東京大学教授の荒木尚志委員が「長時間労働を是正するには、産業全体の公正競争を担保することが必要だ」と述べるなど、さまざまな方策が語られた。
この日は、長時間労働が特に深刻なトラック運送や医療など、業種ごとの是正策が話し合われた。
荒木委員は「トラック運送業界の長時間労働の背景には、規制緩和による過当競争がある」と指摘。90年代以降の規制緩和により事業者数が急増し、過当競争の中で運送料金が切り下げられていった。その結果、コスト削減のしわ寄せが労働者の長時間労働となっていると説明した上で、こう述べた。
「個別企業の努力では対応できない産業全体の問題だ。ヨーロッパでは労働組合の産業別協約が公正競争を担保しているが、日本は企業別組合なので難しい。労働協約の拡張適用やそれに代わる仕組みを公的に設定するなど、産業全体で考えていく必要がある」
早稲田大学教授の黒田祥子委員は、上限時間を設定する際の適用除外など残業規制を緩める考え方がこれまでの検討会で示されてきたことに触れつつ、トラック業界で過当競争によって長時間労働が起きていることについては、適用除外にすべき理由にはならないと指摘。その上で「ヨーロッパでの産業別協約を日本に合う仕組みにして労使の中で運用するのがいいのか、それとも法律で全体の規制をかける方がいいのか、議論していくべきだ」と述べた。
学習院大学教授の今野浩一郎座長は、産業全体に規制を掛ける手法に懸念を示し、「もっとソフトな方法はないか」と述べた。
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