懲罰的な配転や解雇、賃金不払いなどの「パワハラ労務管理」が横行する東洋食品(福岡県北九州市)と元社員らとの闘い(6月23日付で既報)に進展があった。解雇撤回訴訟に関して、解雇期間中の賃金支払いを命じる仮処分決定が出され、争議勝利に向けて大きな一歩を踏み出した。
●「解雇無効となるべき」
1年4カ月の間に5回の配転・異動命令を受けたうえ解雇された元社員の澤山秀之さん(51)は、解雇撤回を求め今年3月に同社を提訴。同時に賃金仮払いの仮処分を申し立てた。これは裁判中に原告が無給状態になることに対し、解雇が無効とされた際の賃金補償を仮払いするよう求めたものだ。福岡地裁小倉支部は9月28日、今年8月から来年3月まで会社が澤山さんに毎月15万7千円を支払うよう命じる仮処分を決定した。
同地裁は、パワハラ是正を訴えていた澤山さんに対し会社が複数回の異動を命じたことなどを認定。加入する労働組合(北九州地域一般)が求めた団交に応じることなく、十分な説明なしに行われた解雇について「性急に過ぎ、社会通念上相当であるということはできず、解雇権を乱用したものとして無効」という判断を示した。
仮処分決定を担当した木野村瑛美子裁判官は、今進められている解雇撤回訴訟を受け持つ裁判官の一人だ。
澤山さんは「今回の賃金仮払い決定は本訴にとっても大きな前進」と述べた。
●不払い残業正す闘い
一方澤山さんを含め元社員や現役社員ら4人は、同社に未払い賃金合計約1500万円の支払いを求めて15年12月、福岡地裁小倉支部に共同提訴している。
同社では手書き出勤簿での労働時間管理が行われており、常勤社員やパート労働者ともに、いくら残業しても契約書通りの出退勤時間を記入するよう強いられているという。原告らはいずれも組合加入後にいじめやパワハラ、不当な配置換えなどを受けており、配転拒否を理由に解雇された元社員もいる。
裁判では現在、原告らが乗っていた営業用車の高速道路の入退場記録などを証拠に、会社が保管する手書きの出勤簿との食い違いを追及している。
二つの裁判は同時並行して進められている。裁判官からも「ブラック企業」という言葉が出るなど、同社の労務管理に対する問題意識が深まっているという。判決は来年春以降の見込みだ。
組合は社前抗議や署名行動(現在約3000筆集計)などを展開。争議はナショナルセンターの枠を超えた地域の労働組合や諸団体が共闘して支援している。
同社は裁判について「弁護士に一任しているのでコメントはない」とした。
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