「機関紙連合通信社」は労働組合や市民団体の新聞編集向けに記事を配信しています

    賃金上昇への確信取り戻そう/連合春闘討論集会/経済の自律的成長を重視

     連合は10月31日から2日間、2017春季生活闘争の基本構想を話し合う討論集会を東京で開いた。4年連続の賃上げを提起している今年は、「経済の自律的成長」「包摂的な社会の構築」「ディーセント・ワークの実現」を重視。政府の賃上げ政策との違いを強調する。討論では、大筋に異論は出ず、公正取り引き実現の取り組み促進を求める意見などが相次いだ。

     神津里季生会長はあいさつで、中小、非正規で底上げの端緒がみられた16闘争の流れの継続を強調したうえで、「『今日より明日、賃金が上がっていく』という確信を取り戻すことが必要」と指摘。「底上げ・底支え、格差是正に重点を置いた取り組み」の展開を訴えた。「今まで以上に開かれた春闘にしたい」とも述べ、経団連をはじめ、中小企業団体、行政と話し合う「地域フォーラム」を全国で展開するよう呼びかけた。

     基本構想をめぐっては、JAMが(1)毎年の賃上げの定着(2)賃金データを集め賃金の社会相場の形成(3)公正取り引きの実現――の三つの取り組みを要望。航空連合は、人材の確保・育成のため、下請け企業との公正取り引き実現へ労使で認識の共有を図っていると報告した。

     答弁した須田孝総合労働局長は「まずはグループや資本関係のある系列で広げることが重要。大企業の購買部門の人が無意識のうちに行っていることが(独占禁止法が禁じる)『優越的地位の乱用』となっている場合もある」とし、職場内の論議が集中する春闘期に啓発と点検を行うよう呼び掛けた。

     ワークルールに関する議論では発言が相次ぎ、終了予定時刻を超えた。既に勤務間インターバル(休息時間保障)制度を導入した労組が「仲間の命と健康を守らなければならない。連合が残業時間の上限を定めるべき」と発言。インターバル規制の推進も求めた。

     均等均衡処遇の実現のため、改正派遣法が派遣先に、賃金などの情報を派遣元に提供するよう定めていることについて、全国ユニオンが実態調査を要請。本部は「検討する」とした。そのほか、改正労働契約法の無期転換が18年4月から始まるのを前に、脱法的な「雇い止め」への対応を求める意見や、固定残業代への規制を求める意見などが出された。

     

    ●「政府と同じは癪」

     

     逢見直人事務局長は討論のまとめで、基本構想の眼目を次のように語った。

       ◇

     賃金は若干プラスだが、中小や非正規には行き渡ってはいない。(昨年まで方針に掲げていた『経済の好循環実現』を取り組み目標から外したことについて)政府と同じように考えていると見られるのは癪(しゃく)。より明確に我々の考え方を示すとすれば、「経済の自律的成長」だ。

     次が「包摂的な社会の構築」。競争に勝った者だけがますます強くなるのではなく、弱者も包み込んで成長の恩恵を一緒に分かち合うというのが、国際社会で共有されている認識。アベノミクスには「包摂」という言葉は出てこない。

     そして「ディーセント・ワークの実現」。「働きがいのある人間らしい労働」と訳されている。権利が保障され、十分な仕事が与えられ、病気になっても十分な保護がある。先進国でも満たされているかといえばそうではない。こうした課題の実現に取り組むのが17闘争である。