安倍政権が当初、成長戦略の中核として掲げた「女性活躍」。待機児童の解消や、今春施行された女性活躍推進法など、いずれも看板倒れの感が否めない。労働団体がこのほど開いた会合では、「ほとんど効果がない」「小手先のごまかし」などの厳しい批判が相次いだ。
●安心して働ける環境を
「安心して働ける条件が整備されず、『とにかく活躍しろ』となっている」。元朝日新聞記者の竹信三恵子和光大学教授はこう指摘し、「女性活躍」政策を振り返った(10月21日、連合中央女性集会)。
女性をめぐる政策で、最初に示されたのが「生命と女性の手帳」案。30代半ばまでの妊娠・出産を奨励する内容だったが、非正規雇用や待機児童問題など少子化の主因に目を向けないことなどに批判が殺到し、廃止に。「3年間抱っこし放題」と銘打たれた、育児休業の3年への延長も、労働者の権利拡充ではなく、助成金をえさに企業に要請する内容。有給の保障もない。
待機児童問題では、詰め込み保育などの問題を抱える民営化を推進。代替策の一つである外国人家事支援事業の導入は、劣悪な無権利労働が懸念される。安心保育にはほど遠いのが現状だ。待機児童数は今年、2年連続で増加した。
竹信教授は「安心をどうするかを強く主張していく必要がある。私たちは活躍するために生きているのではない。安心して楽しく暮らせるための改革でなければならない」と語った。
男性の働き方への言及も。同じ連合集会で浅倉むつ子早稲田大学教授(労働法)は男女間格差を示すジェンダー平等指数が日本は低いままであることに触れ、「男性の長時間労働は何も改善されていない。6歳未満の子どもをもつ男性の家事に費やす時間が一日平均67分(11年)という貧困な状況と、出産前後の女性の継続就労が増えていない状況が統計上ぴたりと符合している」と指摘。労働時間に関する法制度の改正が必要と語った。
●労働時間に上限規制を
「労働法の復権」を今春出版した和田肇名古屋大学法科大学院教授は「女性活躍推進法は内容のない、つまらない法律」とこき下ろした(10月22日、全労連非正規センター総会)。同法は300人超の企業に(1)女性採用比率(2)勤続年数男女差(3)労働時間(4)女性管理職比率など――について、目標や取り組みを示す行動計画の策定と公表を義務付けている。10年の時限立法である。
和田教授は05年に施行された次世代育成支援法に似ているという。同法も10年の時限立法で、男性の育児休業取得促進や残業削減などの行動計画の策定を義務付けていた。
だが、15年度の男性の育休取得率は、伸びたとはいえわずか2・65%にすぎない。同教授は「厚生労働省が自分たちの仕事をつくっただけで、ほとんど効果がなかった。育児介護休業法に手を付けないとだめだということ。全く同じ手法が女性活躍推進法で行われている」と指摘。男女差別への実効ある規制を進めるための男女雇用機会均等法の改正と、労働時間の上限規制の導入、年休の消化の完全実施について使用者への義務付けが不可欠と強調した。
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