衆院の憲法審査会で安保関連法案を「違憲」と断じた長谷部恭男・早稲田大教授が4月9日に東京の中野区で講演し、安倍首相が憲法改正で真っ先に狙っている緊急事態条項について、「一言でいえば不要だ」と切り捨てた。主催したのは中野9条の会。
同条項は、自民党改憲草案の98、99条で打ち出されており、緊急時には内閣が法律と同じ効果を持つ政令を制定できると規定。長谷部教授は「内閣総理大臣が『必要だ』と言うだけで宣言ができ、法律と同じ効力を持つ政令が可能になる。(これでは)発動条件が甘すぎる」と批判した。
●具体的な根拠何もない
政府は「こうした条項は他国にもある」と主張するが、長谷部教授はこう反論する。
「フランスは緊急事態条項を憲法で定めているが、『共和国の制度や国の独立領土の保全が重大かつ直接脅かされたときに初めて発動可能』とある。発動の要件が難しく、使いづらい」
憲法に同条項を持つドイツについては、「連邦国家であり、条項があるのは緊急時に各邦政府から権限を中央に集中させるため」と説明。「連邦国家ではない日本の場合、国会で必要な法律を制定すればすむ話。衆議院が解散している場合は参議院の緊急集会で対応可能」と指摘した。
条項創設に前のめりの安倍政権に対しては、「安保法の時と同じで、必要と言うだけで具体的な根拠がない」と一蹴した。
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